子育てが合わない」と感じたときのヒント｜“ちゃんとしなくていい”理由
「子育てが合わない」と感じるのは自然なこと
「子どもはかわいいけれど、子育てがどうしても楽しめない」「周囲のように自然に母親（父親）になれない」──そんな思いを抱えてしまうと、「私は親として失格なのでは」と不安になる方は少なくありません。ですが、子育てに「向き不向き」があるのは自然なことですし、「合わない」と感じる瞬間があるのも決して特別ではありません。むしろ多くの親が一度は心の中で抱く感情です。
育児は24時間休みがなく、子どもの成長や性格に応じて悩みも尽きません。そのなかで「しんどい」「楽しくない」と思うのは人間として当たり前の反応です。ここでは、その背景を3つの視点から見ていきましょう。
育児に向き不向きはあって当然
「子育てが楽しい」と感じる人もいれば、「苦手だ」「合わない」と感じる人もいます。これは、性格や気質、これまでの人生経験によって違うだけで、優劣や善し悪しの問題ではありません。
たとえば、人と長時間一緒にいると疲れてしまう人にとって、子どもと一日中向き合う育児は強いストレスになりやすいでしょう。また、几帳面な人ほど子どもの予測不能な行動に振り回され、「自分のペースが乱される」ことに苦痛を感じやすいこともあります。
つまり、「子育てに向いていない」と感じるのは、親として欠陥があるからではなく、ただその人の性格や特性と育児のスタイルが一致しにくいだけなのです。
「楽しめない自分」を責めてしまう心理
「子どもはかわいいはず」「育児は幸せなもの」という社会的な価値観が強いために、「楽しめない自分はおかしいのでは」と悩んでしまう親は多いものです。
特に周囲の親が「育児は楽しい」と語っていたり、SNSで笑顔いっぱいの写真を見たりすると、自分の現実とのギャップに苦しくなり、「私はダメな親だ」と自己否定につながってしまいます。
しかし、子どもへの愛情と育児のしんどさは別物です。子どもを愛していても、育児の大変さに疲れたり楽しめなかったりするのは自然なこと。「楽しめない＝愛情がない」ではありません。この理解が、自分を責めすぎないための第一歩です。
世間の理想像とのギャップに苦しむ
雑誌やテレビ、SNSでは「いつも笑顔で、子どもに寄り添う理想の親像」が描かれています。しかし現実の育児は、眠れない夜や言うことを聞かない子どもへの苛立ちなど、理想からは程遠い日常の連続です。
「理想の親像」と「現実の自分」の差に悩み、「ちゃんとできていない」と思い込んでしまうことで、ますます「子育てが合わない」と感じやすくなります。
大切なのは、「世間の理想」を基準にするのではなく、自分と子どもに合った関わり方を見つけることです。親子ごとにペースも方法も違って当然。その違いを認めるだけで、少し肩の力が抜けていきます。
「子育てが合わない」と感じやすい背景
「子育てが合わない」と思うとき、そこには必ず理由や背景があります。自分が弱いから、親失格だから──そうではなく、環境や考え方の影響で「合わない」と感じやすくなっているのです。その背景を理解するだけで、自分を責めすぎず冷静に受け止められるようになります。ここでは代表的な3つの背景を取り上げます。
完璧を求めて自分を追い込む
多くの親が「子どもにとっていい環境を整えたい」「ちゃんと育てなければ」と思います。しかし、その思いが強すぎると、完璧を求めて自分を追い込んでしまいます。
例えば、「毎食バランスのとれた食事を用意しなければ」「子どもが泣いたらすぐに笑顔で対応しなければ」といった理想を抱くと、できなかったときに強い自己嫌悪に陥ります。
育児は予定通りに進まないことばかりです。にもかかわらず「完璧でなければならない」という思い込みが強いほど、現実とのギャップに苦しみ、「自分は子育てに向いていない」と感じやすくなります。
サポートが少なく孤立している
現代の育児は、昔と比べて孤立しやすい環境にあります。核家族化や共働き、地域とのつながりの希薄化などにより、子育てを一人で担わざるを得ない状況が増えています。
サポートが少ない状態では、親の負担は大きく、気持ちが疲れやすくなります。特にワンオペ育児や、実家や親族が近くにいない家庭では、「誰も助けてくれない」「全部自分でやらなければ」という孤独感が強まりがちです。
孤立した状態での子育ては、しんどさが倍増し、「子育てそのものが合わない」と感じやすくなる大きな要因となります。
夫婦や周囲との温度差
子育てに対する考え方や姿勢の違いも、「合わない」と感じる背景になります。
例えば、母親が「大変だ」と感じているのに、夫が「そんなの普通でしょ」と受け止めてしまうと、大きな温度差が生まれます。また、祖父母世代から「私たちの頃はもっと大変だった」と言われると、理解されない気持ちが強まり孤独を感じます。
周囲との温度差は「自分だけがつらいのでは」という誤解を生み、さらにプレッシャーを強めてしまいます。子育てが合わないと感じる背景には、この「理解してもらえない感覚」も大きく関わっているのです。
「ちゃんとしなくていい」理由
「子育てはちゃんとしなければならない」という言葉に縛られてしまうと、親は常に緊張し、できない自分を責め続けてしまいます。しかし、実際には「ちゃんとしなくていい」からこそ、親も子どもも健やかに過ごせるのです。ここでは、その理由を3つの視点から整理してみましょう。
子どもは不完全な親からも学ぶ
「親はいつも正しく、完璧であるべき」と思い込んでしまうと、失敗や弱さを見せてはいけないと考えてしまいます。しかし、子どもはむしろ“不完全な親”から多くを学びます。
例えば、親が失敗して「ごめんね」と謝る姿を見せることで、子どもは「人は間違えることがある」「謝ることは大切」という現実的で大事な価値観を吸収します。完璧を装うよりも、人間らしい姿を見せる方が子どもの学びにつながるのです。
親が「できないときもある」と認めることは、子どもに「完璧でなくても大丈夫」という安心感を伝えることでもあります。
無理をしない方が笑顔が増える
親が「ちゃんとしなきゃ」と気を張り続けると、心も体も疲れ果て、子どもと向き合う時間に余裕がなくなってしまいます。結果として、叱る回数が増えたり、笑顔が減ったりしてしまうのです。
一方で、多少手を抜いても無理をしない方が、親の表情には自然な余裕が戻ります。食事がレトルトの日があっても、掃除が行き届かない日があっても、笑顔で「今日はこれでいいね」と言える方が、子どもにとっても安心できる環境になります。
子どもに必要なのは「ちゃんとした家庭」ではなく、「安心できる親の笑顔」です。無理をやめることは、笑顔を増やす最良の方法でもあるのです。
「ほどほど」で続けられる子育てになる
子育ては一時的なものではなく、何年も続いていく長期戦です。短期間だけ完璧を目指しても、必ずどこかで疲れてしまいます。
そのため、最初から「ほどほどでいい」と考えることが大切です。食事・遊び・しつけ・勉強──どれも「全部100点」を目指す必要はなく、60点や70点で十分。親にとっても続けられるペースで行うことが、子どもにとっても安定した育児につながります。
「ちゃんと」ではなく「続けられること」を大事にする。それが、親も子どもも無理なく笑顔で過ごせる秘訣です。
気持ちを軽くする考え方
「子育てが合わない」と感じることは、決して珍しいことではありません。しかし、その感情を「ダメな親だから」と否定してしまうと、余計に気持ちが追い込まれてしまいます。大切なのは、思いを受け入れ、考え方を少し変えることで心を軽くしていくことです。ここでは、育児に疲れたときに取り入れたい3つの視点を紹介します。
「合わない」と思う自分を受け入れる
「子どもは可愛いけど、子育てが得意ではない」と感じるのは自然なことです。しかし、私たちは「親なら子育てを楽しめなければ」と思い込み、その感情自体を否定してしまいがちです。
「合わない」と思う気持ちを否定するのではなく、「そう感じる自分もいる」と受け入れることから始めましょう。その気持ちは多くの親が抱くものであり、異常でも間違いでもありません。むしろ、素直に認めることで初めて「ではどうすれば心地よく続けられるか」と次の一歩を考えられるようになります。
「合わない」と思うのは失格のサインではなく、工夫や支えが必要なサインなのです。
他人と比べない視点を持つ
子育てのしんどさを強める大きな要因が「比較」です。SNSやママ友の会話を通じて「他の家庭はうまくやっているのに」「あの親はいつも笑顔なのに」と感じると、自分が劣っているように思えてしまいます。
しかし、家庭の状況も子どもの性格も親の体調も一人ひとり違います。比べても答えは出ませんし、むしろ自分を追い込むだけです。
「比べる対象は他人ではなく、昨日の自分」と考えることで、少しずつ気持ちは楽になります。「昨日より10分休めた」「昨日より笑顔で子どもと会話できた」といった小さな進歩を認めることが、自信を取り戻す近道です。
「できていること」に目を向ける
育児中は「できなかったこと」が目につきやすく、「また怒ってしまった」「今日も家事が中途半端」と自分を責めてしまいがちです。
しかし、冷静に振り返れば「子どもを無事に一日過ごさせた」「食事を用意した」「話を聞いてあげた」など、できていることは必ずあるはずです。
小さな達成を意識して数えてみるだけで、心のバランスは変わります。「今日も最低限のことはできている」と思えることで、自分への信頼感が戻り、育児を続ける力につながるのです。
しんどさを和らげる工夫
「子育てが合わない」と感じるとき、その多くは「すべてを一人で抱え込んでしまっている」状況から生まれます。子どもを大切に思う気持ちが強いほど、完璧にやろうとして自分を追い詰めてしまうのです。そこで大切なのは、“少し力を抜く工夫”を生活に取り入れること。ここでは、しんどさをやわらげるために実践しやすい3つの工夫を紹介します。
家事や育児を手放す・外部に頼る
すべてを自分で抱え込むのは限界があります。「母親（父親）だから全部やらなきゃ」と思う必要はありません。
例えば、家事は完璧にこなす必要はなく、ときには惣菜や冷凍食品に頼ってもいいのです。また、掃除も「毎日全部」ではなく「気になるときに一部だけ」とハードルを下げることで気持ちがぐっと楽になります。
さらに、自治体の一時保育や子育て支援サービス、ファミリーサポートなどを利用すれば、自分だけの時間を確保しやすくなります。「頼ることは甘えではなく、子どもと向き合うための準備時間」と考えることが大切です。
自分だけの休息時間を確保する
育児は24時間続く仕事のようなものです。だからこそ、意識的に「自分のための時間」を持つことが欠かせません。
短い時間でも構いません。子どもが昼寝をしている間に好きな音楽を聴く、夜に5分だけ一人で深呼吸する、休日に30分でも外を散歩する──そうした小さな休息が心を整えてくれます。
「休むことに罪悪感を持つ」親は少なくありませんが、休息はわがままではなく、子育てを続けるための大切なリセット時間です。自分を回復させることで、子どもにも自然と優しく向き合える余裕が生まれます。
子どもと“楽しめる瞬間”を大切にする
「子育てが合わない」と感じるときは、「やらなきゃいけないこと」に追われてしまい、子どもとの時間が義務のように感じられてしまうことが多いものです。
そこで意識したいのは、「楽しめる瞬間を大切にする」ことです。例えば、絵本を一緒に読む、ちょっとした散歩をする、歌を歌いながら家事を手伝ってもらう──特別なことをしなくても、親子で笑える瞬間は日常の中にあります。
義務感に縛られるよりも、「今日はこの瞬間を楽しもう」と考える方が、気持ちがぐっと軽くなります。子どもにとっても、親が楽しそうにしている姿こそが安心感につながります。
体験談｜「合わない」と思った親たちの声
「子育てが合わない」と感じるのは、自分だけではありません。実際にそう感じながらも、工夫や気づきを通して心を軽くした人たちは多くいます。ここでは、3人の親の声を紹介します。
家事を減らして心が楽になった母親
30代のAさんは、第一子の出産後、「育児も家事も完璧にこなさなければ」と自分を追い込み、常に疲れ切っていました。赤ちゃんが泣けばすぐに駆けつけ、食事は手作り、家も常に清潔に──そんな理想を自分に課していたのです。
しかし、心身が限界に近づいたとき、思い切って「家事を減らす」ことを決意しました。掃除は毎日から週数回に減らし、料理もときには惣菜や冷凍食品を使うようにしました。すると驚くほど気持ちに余裕が生まれ、子どもと向き合う時間を「楽しめる」ようになったといいます。
Aさんは「子育ては完璧じゃなくていい。70点で十分」と気づいたことで、「合わない」と思う気持ちが和らぎ、笑顔で過ごせる時間が増えたそうです。
パートナーと役割を見直して改善した例
40代のBさんは、共働きで子育てをしていましたが、実際の負担はほとんど自分に集中しており、「私には子育てが向いていない」と思うようになっていました。
そこで思い切ってパートナーと話し合い、「役割の見直し」を行いました。具体的には、送り迎えは夫、夕食の準備は妻、寝かしつけは交代制にするなど、細かく分担を決めたのです。最初はぎこちなかったものの、少しずつお互いの負担が軽くなり、夫婦としての協力感も高まりました。
Bさんは「一人で背負い込んでいたから『合わない』と感じていたけれど、分担したらすごく気持ちが楽になった」と振り返ります。役割を共有することが、「合わない」という思いを解消する大きなきっかけになったのです。
「完璧じゃなくていい」と気づけた瞬間
50代のCさんは、子どもが小さい頃から「いい母親でなければ」と思い込み、子どもの教育や生活習慣に細かく目を光らせていました。しかし、子どもが思春期を迎えると、反発が強まり、「こんなに頑張っているのにうまくいかない。私は母親に向いていないのかも」と感じるようになったといいます。
そんなとき、ある友人から「子どもは親の完璧さじゃなくて、安心感を欲しがっているんだよ」と言われ、ハッとしました。「完璧じゃなくてもいい」と思えた瞬間、長年の肩の荷が下りたような気持ちになったそうです。
Cさんは「子どもにとって大事なのは、親が自分を大切にしている姿を見せること」と気づき、それからは「私らしい子育て」を意識できるようになったと語ります。
まとめ｜「合わない」と感じても大丈夫
子育てに向き合う中で、「合わない」「苦手だ」と感じる瞬間は誰にでもあります。それは決して異常でも、親失格を意味するものでもありません。むしろ、それだけ真剣に子どもや家庭と向き合っている証でもあります。大切なのは、「合わない」と感じる自分を否定するのではなく、その気持ちを認めたうえで、少しずつ工夫を取り入れていくことです。ここでは記事全体を振り返りながら、安心できる3つの視点を整理してみましょう。
子育てに正解はない
子育ては「こうすべき」という正解があるわけではありません。子どもの性格や発達スピード、家庭の状況、親自身の気質によって、合う方法はまったく違います。
他の家庭と比べて「できていない」と落ち込む必要はありません。その家庭なりのやり方で進めていくことが、最も健全で自然な子育てです。むしろ正解がないからこそ、「うちのペースでいい」と思えることが心を守る大切な視点になります。
親も一人の人間として無理しなくていい
「親だから頑張らなければ」と思うあまり、自分の感情や体調を後回しにしてしまう人は多いものです。しかし、親である前に一人の人間。疲れることもあれば、休みたい日もあるのが当然です。
無理を続けてしまうと、子どもにも余裕のない表情や態度が伝わってしまいます。「親も人間だから休むことがある」と考えられるようになると、気持ちがぐっと楽になります。親が自分を大切にする姿は、子どもにとっても安心のモデルになるのです。
笑顔でいられる工夫が一番の育児
子どもにとって一番大切なのは、親が完璧であることではなく、「安心できる笑顔」です。家事を手抜きしても、予定通りにいかなくても、親が笑顔で接していれば子どもは「大丈夫」と感じます。
そのためには、家事を外注する、短い休息をとる、趣味の時間を持つなど、自分を笑顔にできる工夫を生活に取り入れることが大切です。「合わない」と感じたときこそ、自分の笑顔を守る工夫を取り入れてみましょう。
